『グアムの朝刊』2025.5.16 韓国の自殺統計は、私たちにどんな警鐘を鳴らしているのか?

2025年5月16日 Pacific Daily Newsより抜粋、要約

Mental health care sketch diagram

韓国の中央日報が伝えたニュース記事によると、中年の韓国人男性の自殺者が増加しており、「国家的危機」とまで表現されました。

このニュース記事によると、韓国統計庁が4月27日に発表したデータでは、昨年の自殺者数は速報値で14,439人で、人口10万人あたりの自殺率は28.3でした。いずれの数字も2年連続で増加しています。特に30代、40代、50代の男性の自殺者数は5,603人で、前年に比べて13.4%増加しました。

これらの年齢層の数字は、高齢者や女性の自殺が減少傾向にあるのとは対照的です。

記事には、ソウルの橋に設置されたSOSライフライン電話の写真も掲載されており、橋からの飛び降りを防ぐ目的で設置されたことが明らかで、非常に印象に残りました。

昨年1月から今年3月までの間、ソウルの漢江の橋に設置されたSOSライフライン電話で、30~50代の男性が最も多く使った理由は「経済的な問題」で、全体の33.9%を占めました。

慶熙大学医療センターのペク・ジョンウ教授は、記事の中で「昨年以降、『事業をたたまなければならない』『経済が冷え込んだ』『経済的に壊滅的だ』と訴える患者が明らかに増えた」と述べています。

このニュースは、不安定な経済状況が30代から50代の層に直接的な影響を与える引き金となっていることを示しています。記事ではまた、昨年の韓国経済が高金利、高インフレ、賃金の低下により弱体化したことも指摘されており、昨年第4四半期の経済成長率は前期比0.1%と、予測されていた0.5%を大きく下回りました。今年第1四半期の成長率もマイナス0.2%となっています。

これらの情報は、私たちの島(グアム)の経済についても注目すべき重要な警鐘だと考えています。良いニュースとして、先月、グアム大学のビジネス・公共行政学部長であり経済学教授でもあるローザン・M・ジョーンズ博士が、記者のインタビューにおいて「多くの業界標準の指標が、グアム経済が繁栄していることを裏付けている」と語ったことがあります。

グアムの繁栄を示す主な指標には、雇用の成長、地元企業の繁栄、世帯の安定、比較的低い失業率、人々が暮らしやすく繁栄できる経済の手頃さ、そしてグアムに貢献する人々の移住傾向などがあります。

一部では、経済の繁栄は軍の増強に関連する建設業界に限られると考える人もいますが、ジョーンズ博士はそれを「防衛部門の拡大」と呼び、「単に軍に限らず、それに関係する契約企業や関連ビジネス全体を含む」と述べています。また、この防衛部門の広がりは「サイバーセキュリティを含み、地元経済において学生や求職者にとって“高収入”の仕事を見つける機会を提供する」とも語っています。

しかし、そのインタビュー記事の冒頭では「グアムの観光業で働く人々にとっては、必ずしも同意できない話かもしれない」とも触れており、パンデミック後の観光客減少は周知の事実であり、個々の現実に差があることが示唆されています。このような新しい経済の流れの中で、韓国で起きているように、経済的困難が人々のメンタルヘルスに影響を与える可能性があることを私たちの地域社会でも真剣に考えるべきです。

例えば、私の友人の何人かは、以前は観光業や小売業に従事していましたが、現在では幸運にも軍関連や建設業の仕事に就くことができました。しかし、すべての人がそうとは限らず、今も苦しんでいる人もいるでしょう。そういった人たちが新しい経済環境に適応できるよう、特別な支援策を制度として考える必要があります。

韓国では、政治的混乱や深刻な社会的不安が続く中で、メンタルヘルスの問題を防ぐための緊急対策を求める声が高まっています。ペク・ジョンウ教授は寄稿記事の中で、アメリカ政府がパンデミック中に「988自殺・危機対応ホットライン」を開設し、約9億600万ドルを投資して、カウンセリングサービスの拡充、危機対応チームの派遣、アウトリーチの提供などを行ったことを紹介しています。

グアム行動保健福祉センター(GBHWC)が発表したデータによると、グアムの988ホットラインは2022年7月の開始以来、25,000件以上の通話を受けています。GBHWCは、「スティグマ(偏見)はある程度残っているものの」、必要なときに助けを求める人が増えていると見ています。

実際、グアムの自殺率は2020年には人口10万人あたり30人と非常に高く、2021年、2022年、2023年にはそれぞれ21.2、21.9、23.9と減少傾向にあるものの、2023年のアメリカ全体の自殺率14.7と比べて依然として高い水準です。

したがって、自殺は今もなお私たちの島にとって懸念すべき問題です。5月は「メンタルヘルス月間」であることから、私たちの財団は、GBHWCの呼びかけに応じ、地域社会の皆さんが無料で匿名の支援を受けられる「988自殺・危機対応ホットライン」への通話・テキスト・チャットを推奨したいと考えています。

平原 “エドワード” ルー氏は、栄養学の学士号、公衆衛生学および国際経営学の修士号を持ち、30年以上にわたる健康促進の豊富な経験を有しています。現在、グアムとその周辺地域で平和、健康、持続可能性を推進する「グアハン・グローバル財団」の代表を務めています。


他国のことと見逃さず、
グアムの体制づくりに活かしたいですね。

今日は地域保健連携におけるアドバイザーとして活動する友人のLuさんの寄稿記事を紹介しました。韓国の自殺率の高さは以前から言われていることで、経済の停滞も続いています。さらには年始からの政治の不安定化も相まり、さぞかし大変なことだろうと推察していました。

そんな中で、先日3月のグアムへの渡航者数が発表され、10数年ぶりに日本が韓国を上回りました。日本は伸び率も低いままですが、韓国が前年度比マイナス20%以上の減少率を記録しました。

さらには、昨日の記事では連邦政府の予算カットがグアム行動健康・ウェルネスセンターの予算に影響を与える見込みであることを紹介しました。この部署はグアムにおいて島民のメンタルを支える拠り所でもある部署。この予算がカットされると人員の削減もあり得るようです。

韓国の状況を分析することで、グアムにおいての対応に活かされることを願います。

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