『グアムの朝刊』2025.6.2  アナリスト:中国の核兵器備蓄、「グアム・キラー」ミサイルを含め、世界で最も急速に拡大

2025年6月2日 Pacific Daily Newsより抜粋、要約

中国の核兵器庫は現在、世界で最も急速に拡大しており、その中でも特に急速に発展しているのが、米メディアで「グアム・キラー」と呼ばれるミサイルだと、カーネギー国際平和財団の核政策プログラム上級研究員であるアンキット・パンダ氏が述べた。彼はグアムを拠点とするシンクタンク「Pacific Center for Island Security」が主催したオンラインフォーラム「Micronesiaにおける安全保障と不安定性」で講演。パンダ氏によれば、中国がなぜ近年核兵器の拡充に踏み切ったのかは明確ではないが、この動きが地域の軍拡競争とワシントンD.C.での緊張を高めていると指摘している。

中国軍は2019年には約200発の核弾頭しか保有していなかったが、それが現在では700発以上に増加したとパンダ氏は述べた。「中国は2035年までに1,500発の核弾頭を保有する方向で増強を進めており、これは習近平国家主席の下で始まった動きです」と彼は語る。それでもアメリカより核弾頭の数は依然として少ないものの、米国と「核の同等者」と言えるレベルには近づいているとしている。

これは1960年代から続いていた「最小限の抑止力」に基づく中国の核政策からの大きな転換。パンダ氏はまた、特にDF-26弾道ミサイルの増強に注目しており、このミサイルは「グアム・キラー」として知られ、中国本土からグアムを攻撃するために開発されたと見られていると述べた。

中国の核戦力の増強は、長年にわたりロシアや旧ソ連を基準として構築されてきたアメリカの核戦略にとって新たな課題となっている。「これまではロシアを抑止できる核戦力があれば十分だと考えられてきましたが、もはやそれでは不十分かもしれません」とパンダ氏は述べる。

また、もしロシアと中国が連携することになれば、ヨーロッパとインド太平洋で同時に危機が発生する可能性もあると警鐘を鳴らす。欧州での紛争を利用して台湾を奪取するという可能性は専門家の間では「あり得るが低い」とされているが、今やそのようなシナリオも現実的に検討され始めているという。

さらに北朝鮮の核戦力も加わり、アジア太平洋の同盟国に不安を与えているとも述べた。この不安感が軍拡競争を促進し、太平洋地域を「安全保障のジレンマ」に陥らせているという。「韓国、日本、オーストラリア、フィリピン、台湾のすべてが、より危険な状況にあると認識しており、それが軍備増強の動きを加速させています」とパンダ氏は説明。韓国、日本、台湾はミサイル能力の向上を模索しており、オーストラリアは核搭載可能な潜水艦の導入を進めている。

ワシントンD.C.では、「核の傘」がどこまで広がっているのか、すなわちアメリカがアラスカ、ハワイ、グアム、あるいは同盟国での紛争に対して核報復に踏み切るかどうかは、いまだに不透明なままだとパンダ氏は述べる。

なぜ中国は核兵器を増やしているのか――その正確な理由は明らかではないと、アナリストのアンキット・パンダ氏は述べる。ただし、「核による支配」が目的である可能性は低いと見られている。一つの可能性としては、中国がより高い核戦力を持つことで、「米国が有事の際に中国の核戦力を完全に無力化することはできない」と伝えようとしているのかもしれない。

また、単純に「世界レベルの核武装軍」を持つべきだという国内的な圧力が背景にある可能性もあるとパンダ氏は指摘。いずれにせよ、この核戦力の拡大とそれに伴う緊張は、グアムにとって大きな影響を持つと彼は述べる。米政府が支援する報告書では、もし台湾をめぐって米中の核戦争が起こった場合、グアムが攻撃対象になる可能性が高いと警告。

昨年、中国は太平洋に向けて大陸間弾道ミサイル(ICBM)を発射し、グアム上空を通過する際に、現地のミサイル防衛部隊がそれを追跡した。パンダ氏は、中国が事前にこのミサイル実験を米国に通知していたことは「良い兆候」だと述べた。

しかし、最も「不快で、考えたくもない」可能性の一つとして、米中のいずれかが太平洋地域で限定的な目標のために核兵器を使う「戦術核攻撃」の可能性もあると指摘。例えば、米国が通常戦力で劣勢な場合、中国の艦隊を破壊するために核兵器を使う可能性、中国が米国の介入を抑止するために核爆発を行う可能性も、理論上は否定できない。

仮に核戦争に至らなくても、通常戦争においてグアムは重要な拠点になる。「現在、グアムは核作戦の役割は持っていませんが、米国の軍事計画の中では、中国とのあらゆる紛争シナリオにおいて中核となっています」とパンダ氏は言う。

そして、「米軍が何の制約もなく作戦行動を取れる唯一の地域がグアムであり、それゆえに標的になりやすい」のだと述べた。米軍は現在、グアムの空域を「長距離ミサイル脅威に対する最も密に防衛された空域」にしようと計画しており、ミサイル防衛システムの強化が進められている。

しかし、ミサイル防衛の目的は主に軍事資産の生存性を高めることであり、「市民保護の観点からの機能は持っていない」と彼は警告。市民防衛(Civil Defense)がミサイル防衛計画から「大きく欠落している」ことを指摘し、「これがアメリカ本土(48州)であれば、決して見過ごされないはずだ」と述べた。

「戦時において、この地域の人々が避難し、安全を確保できるようにするために、私たちは何をしているのか?」という問いが、今こそ問われるべきだとしている。長期的には、米議会でこの地域の問題を取り上げ、市民防衛について議論する必要があると述べた。「今のところ、ワシントンの議題には全く上がっていません」とのこと。

最後に、米中が戦争に「運命づけられているわけではない」と強調し、最先端兵器に加えて外交の役割の重要性を語りった。「この地域の安全を改善するために、外交は非常に重要な役割を果たします」とパンダ氏は述べた。「アメリカは、自国の安全保障、そしてこの非常に重要なサブリージョン(地域)の安全を、軍事以外の手段を通じてどう向上させるか、もっと創造的に考える必要があります」と締めくくった。


地政学リスクはグアムの宿命

グアムにいると、この手の記事が気になります。「台湾有事の可能性」「米中緊張の今後」「北朝鮮の動き」について考えると、グアムへの影響がどうなるのか、常に思いをめぐらせてしまいます。本記事で指摘のように市民防衛に関する議論や認識は全くありません。グアム政府ではさまざまなシュミレーションがされ、市民を守るガイドラインのようなものはあるのかしら.....、どうなんでしょう、心配です。

明日は韓国の大統領選、反日色が強い候補が優勢のようです。トップが変わる度に政策が右へ左へ、韓国の新しいリーダーの動きもこの地域の均衡を保つ意味で重要になるので注意深くみていくことが大切なようですね。

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