『グアムの朝刊』2025.4.29 経済フォーラム報告:グアムでは軍事建設が優先され、観光産業は後回し

2025年4月29日朝刊 The Pacific Daily News より抜粋、要約

グアム観光産業の課題と展望

デビッド・タイディンコ氏は、グアムの観光産業が直面している最大の課題のひとつは、米領内で進行中の軍事建設産業の影響によって観光業が後回しにされていることだと述べました。また、「観光業は国防事業の影に隠れ、時には無用の長物のように扱われることすらある」と指摘。

2025年4月23日にサイパンのケンジントンホテルで開催された経済フォーラムにおいて、タイディンコ氏は「50年間にわたりグアム経済を牽引してきた観光業の痛みや苦しみは、軍事建設による経済効果の影に隠されてきた」と発言した。

観光業回復への取り組み

イベント後のインタビューにおいて、タイディンコ氏は次のように説明を加えた。
「現在グアム政府が防衛費と建設活動から得ている税収は前例がないものであり、それによって観光産業が直面している課題や経済的打撃が見えにくくなっています。しかし、建設支出が終了すれば、それに伴う税収も途絶えます。持続可能な経済のためには、観光と軍事の両輪が必要です。観光産業は、軍事関係者にとっても生活の質を高める重要な要素なのです。」

また、今後は国際市場をターゲットとした観光事業の回復に一層注力すべきだと述べ、グアムの政治リーダーたちも短期・長期的な支援が必要であることを認識しているという。

FIT(個人旅行者)時代への対応

タイディンコ氏は、観光市場における大きな変化についても触れた。
「かつては旅行代理店が旅行者をグアムに連れてきていましたが、現在は個人手配の旅行者(FIT)が主流となっています。今後は、次世代のFITにどうアプローチするかを考えなければなりません。グアムでは航空座席の確保や、観光体験の向上に向けた戦略的かつ戦術的な取り組みが進められています。」

また、観光客の意見だけでなく、地元住民が何を望んでいるのかも把握することの重要性を強調。

ミクロネシア地域全体の苦境

タイディンコ氏は、グアムとCNMI(北マリアナ諸島)に限らず、ミクロネシア地域全体が観光業の回復に苦しんでいると述べた。
「2024年12月にグアムで開催された年次総会では、各島嶼国の代表がそれぞれの状況を報告しましたが、ほとんどがパンデミック前の50%以下の水準にとどまっています。これは、ホテルなどの地域パートナーを失ったことが大きな要因です。地域一体となった解決策が求められています。」

ハワイからの示唆とオリンピックへの提言

フォーラムには、ハワイ・ロッジング&ツーリズム・アソシエーション会長兼CEOのムフィ・ハンネマン氏も出席し、「デスティネーション・マーケティングとデスティネーション・マネジメントのバランスの重要性」を訴える。
「観光客が訪れてくれなければ、目的地の管理はできない。観光客には、来たときよりも美しくなった場所を体験して帰ってもらうべきだ」と述べた。

さらにハンネマン氏は、ハワイが「米国で唯一君主制の歴史を持つ州」であることをセールスポイントにできるとし、ハワイ文化やオセアニアの価値観をアピールすることの重要性を指摘。また、ハワイは中国や台湾市場に向けた直行便再開に取り組んでいると報告した。

最後に、ハンネマン氏はマリアナ諸島政府観光局に対して、2028年ロサンゼルスオリンピックに出場するアスリートたち向けに、マリアナ諸島を「理想的なトレーニングおよび休暇地」として売り込むべきだと提案した。

ゴールデンウィークがスタート!

物価高・飛び石連休で“巣ごもり”傾向が叫ばれる日本のゴールデンウィーク。それでも春休み以降、久しぶりに街に賑わいが戻っているようです。ただ、まだまだコロナ前の2019年度比では30%程度にしか過ぎません。今日の記事にもあるように、グアムの関心は軍事関連に傾いている傾向にあり、観光業の回復へのサポートは希薄であるように思います。観光業が牽引して発展してきたグアムの半世紀、混沌とした世界情勢、日本経済の不透明さ、グアムで拡大する軍事関連施設、なんとも複雑な心境で過ごす日々が続いています。

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